大宮課長は今日もいじわる

「ううん、なんでもない」
よかった、と水本くんは答えた。

しばらく沈黙があった。
そして、水本くんがちらりと
手元のスマホを見る。

「あのさ、ゆずちゃんってさ、
大宮課長のこと、好きだったりする?」
「え?!あ、いや、そんなわけ…!」
不意にそう聞かれ、あたふたした。
水本くんは真剣な顔つきで
私を見つめている。
「そんなわけないよな?あはは」
「な、ないない!
あんな意地悪で上から目線な人、
好きっていうか、むしろ嫌い」

これはもちろん本心ではなくて、
この場の雰囲気で言ったこと。
だけど、水本くんはそれをきいて
とても嬉しそうに笑った。

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