大宮課長は今日もいじわる

「川崎、それ、もうねーの?」
課長は、川崎さんにそう言った。
「チョコレートですか?ありますけど…」
「一つくれ」
「嫌ですよ」
「はあ?!所長に業務中の飲酒をちくるぞ」
「ウイスキーボンボンだって知らなかったんです。
もう…面倒くさいので一個譲りますけど」
「サンキュ」
課長はそう言って川崎さんから受け取ったチョコレートを
ポケットに滑り込ませた。
絶対後でこそっと食べるつもりだ!
そうじゃないなら仕事が終わる頃に
チョコレートが溶けてしまう。
課長の、人に注意しておきながら
お酒入りチョコレートを頬張る現場をおさえたいけど、
たぶん無理だろう。


私は課長をじっと見つめた。
昨日の課長は、
去年の忘年会の時みたいに優しかった。
何でだろう。
私が最後まで残業しているのが哀れにみえたのだろうか?
わざわざ真希ちゃんに許可まで取って
バーに連れて行ったのは、
本当に鍛えるため?それとも…

いや、深読みするのはやめよう。
課長は彼女持ちだ。

「ところでゆずちゃん。
うちの旦那がね、
今度ホームパーティーをしようって言ってるの」
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