水月夜
「……っ!」


直美の声を聞いて、背中に虫がはうような恐ろしい感覚に襲われた。


『殺す』


そんな言葉を平気で言う直美が怖い。


正直、直美がいるところに行きたくない。


だけど、行かなければ殺されるかもしれないという恐怖に駆られ、深いため息をついた。


「……わかった」


直美との通話を終わらせ、スマホを上着のポケットに入れる。


チラッと『水月夜』に目を向け、祈った。


今日、直美とヒロエと紀子が死にませんように。


目を閉じて両手を握ったあと、私は部屋を出て直美がいるところに向かった。
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