水月夜

『水月夜』の真実


黙ってなにも言えない私に対し、久保さんはさらに話を続けた。


「死んでもらったほうが助かるね。梨沙ちゃんが死んだら、俺に取り憑いた呪いが消えるからさ」


「…………」


「ははっ。『水月夜』を梨沙ちゃんに渡しておいて正解だったなぁ」


この場でひとり笑う久保さんは『水月夜』の絵よりも不気味で怖い。


怖くてなにも言えない私たちだが、ただひとり久保さんに言葉を言い返す人物がいた。


「てめぇ……さっきから聞いてれば自分勝手なことばっかり言いやがって……! 自分が今なに言ってんのか?」


雨宮くんだ。
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