ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「……小春?」

 リビングは電気も点いておらず、静まり返っている。人の気配は感じられなかった。

 いない。いつもなら起きてキッチンにいる頃なのに。まだ寝ているのか?

 普段なら起こしたくないと足音を忍ばせていた。だが、今日は。

「小春」

 彼女の部屋のドアをそっと叩く。

 返答はない。

 やはり寝ているだけかもしれない。それか昨日のことがあって、顔を合わせるのが恥ずかしいとか? そう思うのに、どうしても嫌な予感が背筋を冷たく流れた。俺は部屋のドアを薄らと開ける。

 だが、中を見て、思い切り押し開けながら飛び込んだ。眠る彼女の姿を確認して安堵したかっただけなのに――。

 ベッドは空っぽだった。

 すぐに部屋を飛び出し、洗面所やキッチンを見て回った。しかし、この家のどこにも小春はいなかった。

 手足が一気に冷える。
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