ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
「パパ着替えてくるから、優里、ちょっと待っててな」

 優しく言う颯馬さんに、優里は「うん!」と屈託のない笑顔を浮かべる。私はそのやり取りを眺めながら、眉と眉の間を広く解いた。

 颯馬さんと結婚してから、早いもので五年の月日が流れた。三年前に男の子を授かることもできて、そんな息子の優里ももうすぐ三歳になる。

 妊娠中も、優里が生まれてからも、颯馬さんは献身的にサポートしてくれた。つわりがひどくて食べ物の匂いすらダメだったときには少しでも私が口にできるものがないかと必死に食べやすいものを探してくれたし、妊娠後期、気持ちが不安定になったときは意味なく泣いたりする私の話をなにも言わずに聞いてくれた。

 可能な限り優里の授乳やオムツ替えも手伝ってくれて、今も――。おかげで私は比較的穏やかな育児生活を過ごせていると思う。

 忙しい中、優里や家族と過ごす時間をなにより大切にしてくれている颯馬さんには心から感謝していた。
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