ニセモノ夫婦~契約結婚ですが旦那様から甘く求められています~
 ソファーにテーブル。テレビの横には格子状の棚が天井まであって、たくさんの本が並べられている。照明は淡い黄色で、家具やインテリアはすべてダークブラウンや白でまとめられていた。

 シンプルだけど、とてもお洒落な部屋。モデルハウスにでも来た気分だ。本当に今日から、私もここに住むんだよね?

「空いている部屋に案内する」

 その声にはっとした。部屋の左奥に進んでいく柴坂常務のあとを慌てて追いかける。

「君の部屋だ」

 ふたつ並ぶドアの手前の側のドアノブに手をかけた柴坂常務が、ゆっくりと押し開けていく。

 中には、ベッドに木製のローテーブル、小さな棚があった。落ち着いた佇まいのリビングとは違い、白やベージュで統一された明るい部屋だった。

 もしかして、わざわざ用意してくれたのかな。

 この空間だけ明らかにテイストが違う。言うなれば女性向けの可愛らしいデザインに見えたからだ。

「ありがとうございます……」

 私は当惑しつつも、柴坂常務を見上げて告げた。備え付けのクローゼットの前に、持ってきた大きめのボストンバッグを置く。

 着替えや身の回りの物以外あまり荷物がない私には、これだけで十分入った。
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