わたしとねずみとくるみ割り人形
結 The Nutcracker is my Cupid


 楽団が奏でるのは流行りの輪舞曲。聖なる夜の祝祭を催した本日の主役は揚々とわたしの手を取り中央で踊り出す。
 巨大な緑の樅の木にはいくつもの星飾りと綿で作られた雪が積み重なるように並べられ、周囲には色とりどりな電飾も花開く。
 百冨はわたしと彼が楽しそうに踊る姿を呆気にとられた表情で見つめていたけれど、やがて呼ばれたのか執事の方へ走っていく。
 来賓には当然のように威光を放っている父親と、ちゃっかりついてきている侍医の姿。
 足を踏まないよう、裾を踏みつけないよう、気を配りながらステップを繰り返していたわたしは、曲が終わった後もしばらく由郎の手を握ったままでいた。

「皆様、上空をご覧ください!」

 由郎の澄んだ声が夜空に響く。わたしも思わず天を仰いで歓声をあげる。

「雪!」

 星空を掠めるように、白い羽のようなものがふわふわと舞い降りてくる。冷たくないし、触れても解けないから、彼の派手な演出に違いない。けれど、人工のものでもこうして空高くから降ってくる姿はとても神々しくて。
 溜め息を漏らすわたしに彼はしてやったりの微笑を浮かべ。
 衆人環視の中、誇らしそうに愛の言葉を囁いて、抱き寄せるのだ。


  “The Nutcracker is my Cupid”―――fin.
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