いつかは売れっ子グラフィック・デザイナー
相手はすぐに返信して来た。
「ありがとうございます!ではお会いするまでにお教えすることをリストアップしておきますね」
 二つのネガティブなメールを読んだあとでは、この女性の反応は好ましすぎるくらいだ、と彩香は思った。

 待ち合わせに訪れた女性は和代と言った。彩香はメールでやりとりした通り、アヤカと名前だけ名乗った。
「それじゃ、早速始めましょうか。すでにソフトはインストールされていると言うことでしたね」
 女性は30代初めに見えた。一応センスのいい身なりをしているが、彩香の目からはどこか覇気が足りないように見えた。控えめで、あまり押しが強そうでない…。これだとフリーランスでは難しいかな、と。
 勝手に相手を値踏みしていることに気がつき、彩香は慌てて和代に向き直った。
「ええ、ありがとうございます。ここ二、三日に自分でもやってみたんですけど…」
 和代は箇条書きにしたリストにしたがって、画像ソフトの外枠に並んでいるアイコンの機能を一つ一つ、わかりやすく説明してくれる。その手際の良さに彩香は感心した。
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