さざなみの声


 そんな日々を過ごして、あっという間に一年が過ぎ私は二十四歳になっていた。啓祐さんとの時間は、ますます掛け替えのないものになっていった。

「寧々、愛してる。ずっと一緒に居たい。離さないよ」

「啓祐、愛してる。離さないで一緒に居て……」

 二人だけの空間で過ごす誰にも邪魔されない濃密な甘い時間。こんなにも啓祐のことが好きなんだと改めて思い知る。私の体のすべての細胞が啓祐を欲しがっているんだと思う。
 たとえそれが生涯報われることがなくても、今この時間だけは啓祐は私のものだから……。

「寧々、惚れ惚れするような良い女になったな」

「どういう意味?」

「一年前は可愛くて綺麗で純粋な、まるでお人形のような女の子だった。今は女の色香が漂うような妖艶さすら感じる」

「それは啓祐にとって困る事なの?」

「その色香に魅せられて他の男が寧々に言い寄るようなことがあったら困るね」

「そんなことないわよ。私モテナイもの」

「寧々が気付かないだけだよ。独身でイケメンだったりしたら僕には勝ち目はないな」
 と笑った。

「そんなこと言わないで。私は啓祐だけのものでしょう?」

「寧々はそれでいいのか? 寧々ならいくらでも良い男と……」

「啓祐がいいの。啓祐じゃなきゃダメなの。知ってるでしょう」

「寧々……」

 こんなに近くに居るのに。啓祐の体温を感じてるのに。こんなに好きなのに。心も体も一つになれるのに……。

 ずっと啓祐だけを愛してる。たとえ二度と会えなくなるような事があったとしても。
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