さざなみの声


 みゆきと麗子には

「本当にありがとう。良い友達を持って私、二人には感謝してる」

「何言ってるのよ。私たち何年の付き合いだと思ってるの? 寧々の幸せは私たちの幸せなのよ」

「シュウ、寧々を泣かせたら私たちが承知しないからね。シンガポールまでお説教に行くわよ」

「お説教じゃなくて遊びに来てよ。歓迎するよ。二人が居なかったら、きょうのこの日は来なかったと思ってる。本当に感謝してるよ。ありがとう」

「シュウにそんなふうに言われたら……。私が泣いちゃうわよ」
 麗子は泣いていた。

「じゃあ、みんなで写真を撮りましょう。せっかくプロのカメラマンに来てもらってるんだから」
 そう言いながら、みゆきも泣いていた。


 そして最後に家族のテーブルに向かった。シュウが

「今まで親不孝ばかりで、いろいろ心配掛けました。本当にありがとう。父さん、母さん」

「シュウ、おめでとう」とお父さま。

「寧々さんと結婚したことが最大の親孝行だから。幸せにね」とお母さま。

「兄さん、義姉さん、ありがとう。母さんのことでは本当にお世話になりました」

「何言ってるんだ。気を付けて頑張って来いよ。父さんと母さんのことは僕たちに任せて」

「そうよ。家のことは私たちが居るから心配しないで。向こうで頑張って、そして楽しんで来てね。寧々さんと幸せにね」

 シュウのご両親、お兄さんご夫婦は笑顔で応えてくれた。



「お父さん、お母さん、ありがとう。きょうは来てくれて。ずっと親不孝でごめんね」

「シュウさんと幸せにね」と母。

「寧々、気を付けて行っておいで」と父。

 父と母は泣いていた。



 そして最後にみんな揃って記念撮影をした。両家の家族とも一枚。デザイン室のみんなで一枚。会社から来てくださったみんなと一枚。そして麗子とみゆきと一枚。どのシーンにも眩いばかりの笑顔の花嫁花婿の寧々とシュウが居た。



 私たちは、きょうという日をきっと生涯忘れる事はないだろう。二月二十七日、もう一つの結婚記念日を……。



 そして三月三日。シュウと私はシンガポールへと旅立った。

 少しの不安と抱えきれない程の期待を胸に、シュウと幸せに生きるために。
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