さざなみの声


 それから二週間後の日曜日。シュウが一人で店に来た。

「彼女は? きょうは一人?」

「彼女の正体、分かったから。あれからメールが一度来ただけだよ」

「やっぱりそうだったの。お気の毒様でした。きょうは?」

「来週、母の日だから母さんに何か選んでもらおうと思って。それといつも世話になってる義姉さんにも何かプレゼントしたくて」

「ありがとうございます。お母さま小柄な方だったわよね。着替えとかは、ご自分でなさるの?」

「歩くのが少し不自由だけど、なんとか一人で出来るようだよ」

「そうねぇ……。サマーニットなら着易いと思うけど……。色は、お母さま明るいお色が、お好きだったと思うから、これくらいでどうかしら? 少しラベンダーに近いピンク」

「うん。いいね。じゃあそれにするよ」

「お義姉さまは、お会いしたことないんだけど……」

「義姉さんは背が高くて、165cmくらいあるんじゃないかな」

「お好きなスタイルとか、お色とか分かる?」

「普段はジーンズにTシャツかな。ブルーとかグリーンみたいな寒色系の色が多かった気がする」

「じゃあ、お洒落なカットソーなんてどう? 長めの丈がジーンズにもスカートにも合わせ易いと思う。さわやかなお色がお好きなら、これなんてどうかしら?」

「うん。任せたよ」

「ありがとうございます。ラッピングするね。少々お待ちくださいませ」

 リボンを選んでいると店長が

「あら課長。日曜日にどうされたんですか? 珍しい」

「あぁゴルフの帰りなんだ」

「母の日の奥さまへのプレゼントでも選びにいらしたんですか?」

「店長、適当に選んでくれるか?」

「まぁ適当だなんて酷い。じゃあ、お高い物を選ばせていただきますよ」

「任せるよ。サイズは店長くらいかな」

「十一号サイズってことですね。分かりました」

 店長が選んでいる間にラッピングが出来上がった。

「お待たせ致しました。ピンクのリボンがお母さま、ブルーのリボンがお義姉さまです」

「ありがとう。じゃあカードで頼むよ」

「はい。お預かりします」

 カードと明細を渡してラッピングしたプレゼントを紙袋に入れて渡す。

「ありがとうございました」

「助かったよ。ありがとう」
 と言ってシュウは帰って行った。

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