箱入り娘に、SPを。
箱の中の秘密
小太郎さんがひったくり犯を目の前で捕まえた日の翌日から、私を取りまく環境が大きく変化した。
なにが変わったのかというと、まず、彼が見事に私との約束を破ったのだ。

『絶対、明日の朝、いてくださいね』

『約束するよ』

この会話をまんまと裏切った。


翌朝、部屋のドアを開けたら、見たことのない強面のガッチリとした体型の長身のスーツを着た男性が立っていた。
“屈強”という言葉が当てはまるような容姿の彼は、短く刈り上げた髪が小太郎さんとは正反対だった。

歳はもしかしたら小太郎さんとそう変わらないかもしれないが。

「おはようございますッ!初めまして折笠さん!」

朝早いというのに、腹の底から出すような気持ちの良すぎる声のボリュームで挨拶し、綺麗な九十度の角度で頭を下げてきた。
警察手帳をご丁寧に見えやすいように掲げている。

「自分、警視庁捜査一課から来ました、警部補の鬼塚恭之介といいますッ!今日の夕方まで自分が折笠さんの警護に当たりますッ!よろしくお願いシャス!!!!」

名前まで強そう。

「お、お、お願いしゃす…」

思わず、一緒になって「押忍!」と言ってしまいそうなノリだった。

はっとしてこちらも頭を下げる。

「折笠美羽です。よろしくお願いします」


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