黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 「ほら、めしだ。座れ。」
 「…………ありがとう。」
 「ふんっ。」


 大きい木製のテーブルに椅子がふたつだけあり、水音は銀髪の男の向かい側に座った。
 テーブルには、丸いパンのような物に、赤色のスープのようなものが置いてあった。その中には赤と白の野菜に似た物が入っていた。


 「いただきます。」
 

 水音は、手を合わせて挨拶をしてからパンに手を伸ばすと、男は不思議そうに水音の事を見ていた。


 「どうしたの?」
 「今の、いただきますって何だ。」
 「あ……知らないのか。えっと、私たちが食べる物は全て生きている物でしょ?草だって、木の実だって、魚、動物のお肉も。だから、その命を粗末にしないで大切に貰います、って祈るの。「あなたの命を大切に、いただきます。」って。」
 「………ふーん。」


 男は聞いておきながら、興味をなくしたのか、パン(のようなもの)にがぶりと噛りついた。
 水音も真似をするように、小さく口を開けて、恐る恐るパン(のようなもの)を食べてみると、味が薄いフランスパンのようだった。
 

 「おまえ、名前は?」

 
 銀髪の男は、片手でスープの入った器を持ち、ゴクゴクと飲みながら、世間話でもするように、話しを掛けてきた。


 「鳳水音。あなたは?」
 「鳳ねー………。」
 「どうしたの?」


 男は、水音の全身を上から下まで眺めながら。ジロジロ見られていると、何かおかしな事があるのかと思ってしまう。


 「…………暁シュリ。」
 「暁シュリ。なんか、真っ赤な夕陽みたいな名前だね。」
 「……そんな綺麗な名前じゃないよ。おまえとは真逆の色だ。」


 確かにそうかもしれない。
 水色と朱色(朱璃という漢字らしい)は、真逆かもしれない。けれど、水音はシュリの名前を何故かとても気に入った。

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