黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 少しずつレイトとも、今まで通りに話せるようになって、湖で戦いの練習をしていた時だった。


 「ね、誰か僕たちの事見てるよ。」


 つばぜり合いをしている時に、レイトが小声でそう言ってきた。
 レイトが視線で合図をした先には、ニコニコと微笑みながらこちらを見ている女性がいた。30代ぐらいの女性で、身なりからして黒の刻印の持ち主ではなかった。真っ白のワンピースを着て、大きな袋を持っていた。


 「あんまり関わらない方がいい。」
 「うん。そうだね……。」


 シュリは少し気になったものの、ただ見ているだけの女性を無視することにした。
 その後、二人は立てなくなるぐらいまで稽古をして、草むらの上に倒れこんで息を整えていた。


 「坊や達、大丈夫?」
 「っっ!!」


 シュリは、すぐに飛び起きて持っていた木刀で、その声がした方に剣先を向けた。
 すると、そこには先ほどからシュリとレイトを見てきた女性がビックリした顔で立っていた。
 けれど、その女性はまたニコニコと笑っていた。黒い瞳に黒い艶のある髪、そして目が垂れ下がりとても穏やかに笑う女だった。


 「あら、ごめんなさい。驚かせてしまったしら?」
 「………。」
 「沢山、練習して疲れたでしょう?この甘いお菓子でもいかが?私がつくったの。」


 綺麗に包まれた袋の中からは、ふんわりと甘い香りが漂ってきていた。昨日からろくな物を食べていなかったシュリとレイトは、それに釘付けになってしまう。けれども、すぐには手を出せない。毒や妙な薬が入っているかもしれない。そんな物を食べさせて金目の物を取られるなんてことは、黒の町ではよくあることだった。




 「甘いものは嫌いだったかしら?」
 「……何の用だよ。」
 「シュリ……もう帰ろう。」
 

 シュリは黒髪の女を睨み付け威嚇し、それをレイトが服を引っ張って止めようとした。
 女はその様子を見て、目を大きくして何度か瞬きをした後に、嬉しそうに笑った。


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