黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 その日も湖で遊んでいると、どこからかガシャガシャと金属がぶつかる音聞こえてきた。
 黒のスラムで住んでいればすぐにわかる。黒の刻印がその音をとても怖がり、聞こえてくれば隠れてしまう。そんな不吉な音だ。


 「シュリ………この音。」
 「あぁ、白騎士だ。」


 この湖の近くまで白騎士が来ているのだ。
 今、逃げたとしてと見つかり捕まってしまう。シュリ達がいる場所には、木が全くないのだ。湖の中に逃げたとしてもバレてしまう。

 白騎士は、躊躇いなく黒の刻印を殺してしまうと有名だった。悪いことをしていなくても、理由をつけて無実の人を殺してきていた。
 それは噂でも、嘘でもなく、シュリやレイトも何度もその様子を目撃していた。
 そのため、レイトは顔を真っ青にして震えていた。


 「どうしよう……僕たち殺されちゃうの?」
 「……拾った短剣を持ってる、俺が何とかするからおまえは逃げろ。」
 「そんなっ!!」


 シュリとレイトがコソコソと話しをしていると、雪香は不思議そうにこちらを見ていた。


 「どうしたの?そんなに恐い顔をして。」
 「白騎士がこっちに向かってるんです。」
 「あら、何かあったのかしら?」


 雪香は白騎士と聞いても全く怖がる様子もなく、キョロキョロと辺りを見ていた。シュリは、雪香は白が普段している事を知らないのだとわかった。残虐で非道な姿を見たことがないのだろう。当たり前だ、雪香は白蓮の刻印の持ち主なのだから。


 「雪香様!」


 茶色の馬に乗り白い甲冑を来た男が、雪香を見つけてこちらに向かってきた。そして、雪香だけではなく他に誰かがいるとわかると、その男の目が険しくなった。


 「雪香様、旦那様がお待ちです。お戻りください。」
 「ええ。わざわざ来てくれて、ありがとう。」


 そういうと、雪香は笑顔で立ち上がり、白騎士の方へと向かった。そして、こちらを振り向いて「またね、ふたりとも。」と、手を振った。
 けれど、それで終わるはずもなかった。


 「貴様たち、黒だな。雪香様を連れ去るつもりだったか。」
 「っっ………。」
 「そんなことは!」


 レイトが震える声で、反論しようとする。すると、白騎士は馬から飛び降りて、ゆっくりと剣を抜いてこちらに向けた。


 「何をしているの!この子たちとは、お話をしていただけよ。それに、6才の子どもに剣を向けるなんて。剣を下ろして!」 


 雪香は、驚きと恐怖で震えていたけれど、必死に白騎士に向かって大きな声で止めるよう説得する。
 雪香は、白蓮の刻印だ。白騎士も雪香の命令なら聞くと思ったのだろう。
 しかし、白騎士は剣を下ろさず、シュリとレイトを鋭い目で睨み付けた。


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