黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛
22話「甘えて欲しくて」





   22話「甘えて欲しくて」





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 「長くなったけど、こんな感じだな。まぁ、昔話だ。」
 「………シュリ、話してくれて、ありがとう。」


 水音は、シュリの話しを相槌をうちながらも、ずっと聞いていた。驚いたり、そして泣いたりしながら。
 自分の母親の過去。そして、シュリやレイトの辛い経験など。母や彼は、この世界で必死に生きていたのだ。自分の運命に戦い、そして、世界に抗おうとしながら。

 それを知ってしまうと、自分はいかに何もしていないと思い知らされてしまう。
 自分も何かしなければ、と話を聞きながら強く思っていた。
 シュリに頼るだけではない。
 自分が思う道を探さなければ、と。


 「それから、ずっとレイトとは別々に生きているの?」
 「いや。時々は会っていたよ。刻印の交換について、本や昔の日記でわかったことを聞いたり、白騎士のについても教えてもらってたしな。」
 「レイト……。白騎士の隊長にもなって、白蓮のみんなにも好かれてるぐらい馴染んでいるなんて。すごくすごく努力したんだろうね。」
 「あぁ。俺もそう思ってんだ。俺が白蓮の領地に行ってたら、誰とも関わらないで、ただ黙々とおまえが来るのを待っているだけだっただろうな。……まぁ、ここにいても、俺は黒の刻印を体に入れただけだったけどな。」


 シュリはそう言い、苦笑しながら自分の胸の刻印を見つめた。
 シュリはここでずっと待ち続けていたのだ。黒のスラムの暗くて寂しい町で。ずっとずっと一人で。


 「そんな事ないよ!この黒の刻印だって、自分が白蓮だってバレないようにって、痛いのにしたんでしょ?それに……私の事を1番始めに見つけてくれたのは、シュリだよ。」
 「………そう、だな。」
 「ありがとう、話してくれて。そして、私を見つけて、助けてくれて。」

 
 我慢していた涙が水音の頬をつたって、テーブルにポタポタと落ちた。
 すると、「おまえ、さっきから泣いてばっかりだな。」と、苦笑しながらシュリはイスから立ち上がって、目の下についた涙をペロリと舐めた。


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