黒の殺し屋と白蓮の騎士との甘い異世界恋愛



 水音の刻印は、胸元に出来ていた。
 シュリが偽りの黒の刻印を胸に刻んだ場所とほぼ同じところにあった。
 夜に感じた、あの優しい暖かさを今は感じることは出来なかったけれど、水音はその刻印がを見るのが好きになっていた。

 シュリから与えられた刻印。
 それは、シュリのものになったという印でもあるようで、水音は少しだけくすぐったい気持ちになった。


 「白蓮の刻印だな。……当たり前なんだけど。」
 「うん。とっても綺麗だね。私は肌が白いからあまり目立たないけど。シュリは、とても肌に映えるよね。」
 「刻印だけなら、いいけどな。」


 そんな事を言いながら、シュリも服を捲って刻印を眺めた。


 シュリと水音は、早めの朝食を食べた後だった。
 そんな話しをしながら、刻印を見せ合っていた。
 久しぶりに元の世界の服に袖をとおした。やはり、しっくりもくるし、安心感を水音は感じていた。


 「刻印が現れたから、あとは刻印を交換するだけだけど。その方法はどんなものなの?」
 「お互いの刻印があの湖の水に浸けて、願うだけと、昔の記録には書いてあった。」
 「………刻印の交換でいいの?」
 「それは………まだ、わからないんだ。」

 シュリは、はぁーとため息をつきながらそう答えた。
 シュリは、水音がいた元の世界に憧れているのを、昨日の話してくれた過去の事で、水音はわかっていた。
 みんな平等に働き暮らしていく。困った人がいれば助けて、いざ苦しくなったら助けて貰える。
 そんな世界を。

 元の世界でも、難しいことだったけれども、助け合いも多いのは事実であったし、ここの生まれたときの刻印で生活がかわるという理不尽さはなかった。

 その事を考えていた時に、水音はあることを思い付いたのだ。


 「あのね、シュリ。1つ考えていたことがあるの。」
 「なんだ?」


 水音は、まっすぐにシュリの目を見て、真剣な面持ちのまま彼に考えをつ伝えた。
 彼ならきっとわかってくれる、と。



 「全ての刻印を青草の刻印にしよう。」




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