虚愛コレクション


今日の彼は優しい。優しいからぽつりと吐き出してしまった。

背を向けた筈の自分の弱さに。


「――透佳さん、私は間違っているのでしょうか」

「何を」

「お母さんの事がショックだったからってこんな……貴方とこの関係を持って」


言葉が考えるよりも早く口から滑り落ちる。自分の声で自分の発した言葉をしばらくしてから理解する。

それはまるで、否定しているようで。彼との今までを否定しているようで。


「後悔してるんだ?」


それは、いけないことだ。そんなことをしてしまっては、私は私でいられなくなってしまう。今この場この関係が私の拠り所であり、大事なものなのだから。

この関係でないと彼とはいられない。そう、私を嫌いだったとしてもこの関係に支障はない。でも否定してしまえば崩れてしまう。


「っ、してない……!して、ません」



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