虚愛コレクション


――


幸い。と言うべきなのだろうか。冬休みには数日前に入っていて、神楽くんとは顔を合わせる事はなかった。

どう思っているのか、考えれば考えるほどに抜け出せなくなる。明確に見えない事がひたすらに怖かった。あの表情は一体何だったのか。


「で、何でアンタは毎日のように入り浸ってんの」

「なるべく透佳さんの近くに居たいからです」


ニッコリと笑って答えてみせる。

神楽君の事を出来るだけ頭から追い出してしまいたかった。

バレてしまうのが怖いからと彼と会うのを気持ち程度控えていたのに、今は追い出したいからと一緒にいる私は自分勝手なやつだった。

手に持っていたマグカップを口に運ぶ。甘くもなく、苦くもない。砂糖一杯にミルク少しが私の黄金比率。彼は砂糖沢山にミルクも沢山だったか。とにかく吐き気がするくらいに甘いコーヒーなのは確か。


「もうすぐ正月なんだから、色々やる事あるんじゃないの」

「透佳さんこそ、実家に帰省とかするものじゃないんですか?」


聞いて、ふと思った。


「そう言えば、透佳さんの実家って何処なんですか?」


ただただ軽い気持ちだった。答えてくれるとも思って居なかったのにその予想は外れてしまった。


「実家なんて無いよ。親なんて居て居ないようなもんだし」




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