虚愛コレクション


近づかれた分、一歩、二歩、後ろに下がる。

そんな取り繕った言葉なんて要らない。


「私、嘘は嫌いなの」

「……」


私の反論に神楽君は何も言わずに、含みのある笑いをしてから、尖った犬歯を見せる程大きな笑みを作った。

そうして、人差し指を立てる。自然と其方を見てしまったのは人間の反射だろう。


「僕は嘘にも種類があると思ってる」


一を作って言う“逃げるための嘘”

二を作って言う“無自覚の嘘”

三を作って言う“見栄を張る為の嘘”


「他にも色々、嘘の数だけ種類がある」


パッと手を開き、集めた嘘を振り払う。


「けど、その中で一番許せないのは自分の罪を隠す嘘だ。自分を守るための嘘」


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