雨宿り〜大きな傘を君に〜
男の子と関わる機会がないせいか、崎島のあしらい方がよく分からない。あからさまに嫌がっているこちらの気持ちに気付いていないはずがないのに、懲りずに近付いてくる彼の心理が見えない。
本当にどうしたらいい?
後ろから聞こえる足音に、動揺する。
追いかけて来たんだ。
2人きりになりたくないし、まだみんなの目がある自習室に居た方が良かったかもしれない。
「大野!待ってくれよ」
どうしよう。
この時間は全ての教室が使用中だし、自習室に戻るには崎島を通り過ぎないといけないし。
どうしよう、どうしよう。
「大野、そんなに俺のことが嫌い?」
「……」
嫌いだよ、混乱する頭の中でそう答える。
口に出して拒絶する勇気は、ない。
あ…あそこ!
考える間もなく、
角を曲がって見えたその部屋の、
扉を開けた。