雨宿り〜大きな傘を君に〜
発言した本人は飄々としていて、お茶菓子を準備している。
どういう意味??
ていうか突然なに?
ふざけた様子もなく先生は続けた。
「一応、家主の許可はもらっておこうかと思って」
「許可っておまえ…」
近くにあったティッシュケースに手を伸ばした緒方さんは眉間に皺を寄せて、私を見た。
「初対面で一目惚れってやつ?」
緒方さんにはまだ話してないんだ。
私たちが同じ塾に通っていること。
最初から緒方さんはぶっきらぼうだったけど、更に不機嫌になった模様。
私のせいだよね?
「そんな怖い顔しないでくださいよ。もしも彼女に何かあったら責任をとるつもりで、面倒見るってことです」
「責任と手を出すって、意味違くないか?」
「そうですか?同じでしょ」
責任をとるつもりで面倒を見るって、なんだか結婚を前提にした関係のようで気恥ずかしい。
「……いいんじゃないか」
え?
床に溢れた雫を拭いながら、どうでも良さそうに緒方さんは言った。
「ええ」
その答えを聞いて満足そうに頷いた菱川先生と目が合う。
温かい眼差しだった。