俺の「好き」は、キミ限定。
 


「でも、背の高いユウリくんがいて良かった」

「ん?」

「だって、絆創膏持ってただけじゃ、どうにもできなかったもん。私ひとりじゃ、どうしていいかわからなかったよ。だから、ユウリくんがいてよかった。ありがとう」


無防備に、ふにゃりと笑ったミオを前に、身体が自然と動いていた。

──抱きしめたい、なんて、直前にそんなことを考えていたせいだろう。

思わず腕を伸ばしてギュッと小さな身体を閉じ込めると、ミオの身体は俺の身体に添うように収まった。


「ユ、ユ、ユ、ユウリくん……!?」

「……っ、う、わっ!? ご、ごめん、俺──」


気がついたら俺は、ミオを抱き締めていた。

一瞬の出来事に驚いたのは俺自身も同じで、慌てて身体を離して一歩距離を取った。


「ほ、本当にごめん……っ!」


必死に謝ったものの、ミオは真っ赤になって固まってしまっている。

とんでもないことをしてしまった──と思っても、あとの祭りだ。

なんと言い訳をしたところで無理だろう。


「……っ、も、もう二度と、しないからっ」


思わず、口元を隠して顔を背けたら、また胸が苦しくなった。

そうすればミオは今度こそ押し黙ってしまって、重い沈黙に息が詰まりそうになる。

少しずつ、お互いのことを知っていこうと思っていたのに。これじゃあ、もう全部、台無しだ。

先ほどミオが捻った蛇口から、ピチョン、と水の滴が零れて落ちる音がした。

想いが、勝手に溢れてしまう。

もうこんなの、俺がミオを好きだと、本人に気付かれたに決まってる──。

 
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