俺の「好き」は、キミ限定。
 


「当たり前でしょ! 美織主演のドラマとか見たくないしっ! 絶対つまんないに決まってるもん!」

「な……っ、なんなの、もうっ! そんなの私が一番よくわかってるし、ただのものの例えでしょっ」


言い返すと、フンッ!と鼻を鳴らしたたっちゃんが、腕を組んでそっぽを向いた。

もう! ほんとになんなの、この嫌味大魔王!

昨日、ユウリくんに散々楽しくたっちゃんのことを話した自分がバカみたいだ。

ユウリくんは、そんな私の話を「聞けて嬉しかった」とまで言ってくれたのに……ユウリくんにも申し訳ない気持ちになる。


「ユウリくん、すごく優しい人だよ。ユウリくんも、この本の作者の小春さんのファンみたいだし、昨日もそれでお互いのことを色々話しただけで、特に変なことは何も──」


けれど、事の発端である本を手に持ち、そこまで言いかけたところで、ふと、あることを思い出した。

木登りしていた男の子を助けて見送ったあと、私たちは二人きりになって……。

 
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