終わりにした夫婦

赤ちゃんを失ってから
亜子は、中々元の亜子には
戻れなかった・・・

身体は回復しても
心が塞ぎがちになってしまい・・

少しずつ身体が
落ちついて来てからは
亜子の思うように一週間の内
何日かの仕事をはじめたり
ゆっくりと過ごしたりして
なんとか・・
元の亜子に戻っていき・・

2年を過ぎた頃
二人目を妊娠した・・・

亜子は、凄く不安がっていたが
無事に赤ちゃんは産まれた。

豪(ご う)→長男が生まれ
菫(すみれ)→長女
柊(しゅう)→次男
五人家族になり
賑やかで楽しい毎日を送った。

結婚当初は、俺も平社員で
自由もきいていたので
子育も手伝う事ができていたが
安定した生活をとるには、
役職について・・・となり
だが、役職に付くと仕事優先となった。

始めの頃は、
家の事も子供達の事も、
亜子に任せっぱなしになり
「すまない。」
と、言うと
「あなたは、家族の為に
お仕事してくれているのだから」
と、会話をしていたが・・・

いつしか・・それに気をよくしてしまい
そうだ、俺はこいつらを養っているんだと
ますます、仕事中心になり
子供達の小学・中学、高校の行事に
参加した事もなく
進学、就職も本人や亜子に任せて
報告だけを受けた。

就職の時も・・・
三人はそれぞれに自分の道に進み
長男の豪は、IT企業へ入社
長女の菫は、小学校の先生
次男の柊は、大学の研究施設で働いている。

私生活でも・・
長男と長女は結婚をした。

結婚の挨拶に相手がきた時も
俺は、顔をあわせただけで
後の事は、全て亜子に任せ
子供達は、亜子に相談しながら
両家で色々決めたようだ。

長男・豪は、
会社の同僚と結婚して
会社の近くに住み
長女・菫は、
大学から付き合っていた相手で
レントゲン技師
彼の勤める病院の近くに住んでいる。

次男・柊も、職場の近くに。

子供達といつまで
色々な話をしていたのかさえ
覚えていない・・・

高校の合格、
大学の合格、
就職が決まったとき
報告は、本人達から受けたが
機械仕掛けのような内容だった。
「○◯高校に合格しました。」
「◯◯大学に合格しました。」
「◯◯会社、教員採用試験に
内定、合格しました。」
のように・・・

俺もそれに対して
「そうか」と、言うぐらいで
おめでとう、とか
良かったな、とか・・・さえ
言った事はない。

日頃から会話をしていないから
子供達が何を考え、何を悩み
何を望んでいるのか
全くわからなかった。


亜子と子供達は、
 仲よさそうだが
俺は・・・と、言うと
土曜日は、出社や出張が入り
日曜日は、接待ゴルフ
夜は、そのまま飲み会。

平日も帰りは
20時、21時・・
この時間は早いほうで、
深夜に及ぶこともあった。

俺が、働いて頑張っているから
こいつらは、生活できているんだ。

子供の面倒は妻が見ることが当たり前
いつしか そんな風に
 考えるようになっていた。

世の中には、家庭も大事にして
会社でもバリバリ働いている人も
沢山のいるのに・・・

俺は、そんなことをまったく
考えていなかった。
< 4 / 51 >

この作品をシェア

pagetop