どこかで出会っていた人 〜 謎めいた同僚
亜矢は島田美香を通じて、所属するグループに紹介された。また美香は亜矢を連れて二課の河田課長に挨拶に行った。

「そうか、君が茅原くんか。神奈川支社は残念がっているらしいな。真面目でやる気があり、優秀な社員を手放すことになって」

課長が言うと美香はニコニコし、亜矢は恐縮した。

「ともかく、我が課としては喜ばしいことだ。わからないことは何でも島田くんや他の人に聞いてくれるように」

「わかりました、ありがとうございます。ご期待に添えるようにがんばります!」

亜矢は深く頭を下げた。



その日はあちこちへのあいさつ回りに多くの時間を費やした。おっかなびっくりで、まだ他の部署への道筋もわからずまごついてばかりだったが、亜矢の気持ちは晴れ晴れとしていた。

「どうだった、今日1日は? 忙しかったね、覚えることや人が多くて」

美香が聞くと亜矢は、心からの笑顔で答えた。

「はい、とてもやる気が出て来ました。やっぱり本社は色々とすごいですね。全然規模が違うし」

「うふ、そうか、よかった。頑張ってね」

「はい」




1日を終えた亜矢は一人、エレベーターに乗り込んだ。


あかね色に少し鈍く夕日が差して、眩しさに手でさえぎりながら亜矢は笑顔になった。
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