溺愛総長様のお気に入り。


「……もしもし」


『ケガしたのか?』



耳を震わせるその声に、胸がきゅっと痛くなった。


さすが情報が早いな。きっと何をしても彼には筒抜けなんだろう。



「あ……はい。これから病院に行くので、今日はあやめには行けません」



言っておかないと、また心配させてしまう。


むしろ、遅いから早く来いという催促の電話かと思ったのに。



『んなのはどうだっていいんだよ。ケガの具合は?』



純粋にケガの心配をしてくれていることに、胸が熱くなった。



「ちょっと足が腫れてますけど、骨折はしてないと思います」



幹部は湿布で覆われていて見えないけれど、痛みや腫れの程度からして、骨には異常はなさそう。


落ちた時は、骨折したかと思った。



「くしょん!」



とそこへ、南里くんが突然くしゃみをしたのでビクンッと肩を揺らしてしまった。


見上げれば、また次のくしゃみが出そうになっていて。



「大丈夫!?」



あたしは慌てて枕元にあったティッシュの箱から2~3枚抜き取って渡した。

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