ツインテールの魔法

すると、少しずつ笑い声が大きくなっていった。


「なんだ、結局桃城のせいかよー」
「お前、次は俺が狙われるかもー、とか言ってたよな」


夏音は楽しそうに言うクラスメートに少し戸惑った。


「みんな、怒らないの?」


夏音の質問で、自分の近くにいる人と顔を見合わせ、笑い出した。


「謝ってるんだしいいよ」
「衣装も着回すことに決まったし」


みんなの優しさが、夏音は嬉しかった。


「ありがとー……」
「あれあれ、夏音ちゃん泣いちゃった?」
「な、泣いてない!」


そう言いながら涙を拭っているのだから、説得力がまるでない。


「さすが夏音ね。喧嘩になってもおかしくなかったのに」


出入り口に立って、クラスメートの中心で泣きながら笑う夏音に感心する。


「愛嬌だ。人に憎まれない性格をしてる」
「今も昔も変わらないのね」


麗は思わず笑みがこぼれる。
それに対して、紘は鼻で笑った。


「お前は相変わらず偉そうだよな」
「あら、人のことを言える性格なのかしら」
「俺は夏音に嫌われなかったらほかはどうでもいい」


麗は隣に立つ紘を見るが、冗談を言っているようには見えなかった。


「まったく……どうしてあなたが人気を得られるのか、微塵も理解出来ないわ」
「こっちのセリフだ」


こちらはこちらで笑っていたが、みんなとはまた違う理由で笑っていた。


こうして事件は解決し、それぞれ文化祭の準備に励んだ。
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