ツインテールの魔法

3


その日、深夜の地域ニュース番組で、今日の事件について放送された。

それに気付いた瞬間、紘はテレビの電源を切る。


「紘くん……?」


風呂上がりの夏音は髪を拭きながらリビングに来た。

紘は夏音にかける言葉を探す。


「……髪……乾かすよ」


紘は洗面所からドライアーを取ってくると、ソファの前に夏音を座らせた。

毛先から垂れた水が絨毯に落ちる。
ゆっくりとその毛先をまとめ、軽くタオルで拭く。


ドライアーのスイッチを入れると、その音だけが部屋に響く。
少しずつ乾いていく髪に、紘は焦りが出てくる。


なにを言えばいい。
戸籍上家族だとしても、所詮は他人だ。

言葉を間違えれば、またあの日のようにすれ違う。
あのときはまだよかった。
あのときは、フォローしてくれる蒼羽がいた。


だが、今はそのフォロー役はいない。
今度は、間違えるわけにはいかない。


考えれば考えるほど、まとまらなくなる。


そうこうするうちに、夏音の髪は乾いてしまった。


「……終わった」
「ありがとう、紘くん」


ドライアーを止めると、沈黙が流れる。


結局なにもまとまらなかった。
この無言の時間も、無理なかった。


「紘くん」


すると、夏音がいつの間にか向きを変え、正座していた。
< 159 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop