ツインテールの魔法

「すみれセンパイ?」


紘が重い口を開いて話したというのに、夏音は軽く返した。
夏音の反応があまりに予想外で、紘は顔を上げて目を見開く。


「知ってたのか?」
「男子に人気な子って、女子に嫌われやすいからねー。てんけん的なタイプだよ、すみれセンパイは」


夏音は紘の腕を引っ張って、立たせる。


「典型的だ」


訂正する紘は、まだ落ち込んでいた。


「……知ってて、どうしてなにもしなかった?」
「ノン、すみれセンパイがいじめられてるとこに、出くわしちゃったの。バッチリ、すみれセンパイと目が合った。だけどセンパイ、すぐに目を逸らした」


夏音は紘の手首を掴む力を強めた。

なにもしなかったのではなく、できなかったのだと、夏音の悔しい思いが伝わってきた。


「……でも紘くん、センパイがいじめられてるのが今回の事件に関係あると思ったの?」
「これといった根拠は……ただ、日野に話を聞いた日、先輩の様子がおかしかった」


すると、夏音は紘から手を離し、腕を組んだ。


「夏音、なにかわかったのか?」
「根拠ないから、ヒミツ」


夏音は人差し指を唇に当てた。
そして、向きを変え一歩踏み出した。

そのせいで、紘はモヤモヤを抱えたまま試験を迎えることとなった。
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