カタヲモイ、解消シマス。

「送ってやれよ」


こっちも見ずに吐き捨てたマスターがポケットからタバコを取り出し、咥える。


「うるさいなあ。そんなことして余計好かれたらどうするの」

「嬉しいクセに」

「バカか」

「素直になれよ。青葉ちゃんが気に入ってるって」


爽やかマスターが営業中にタバコ吸うなよ。

途端に飲み屋のカウンターみたいな雰囲気になる。


まあここ、禁煙でもないけどさ。

それのニオイ僕はそんなに得意じゃないや。


身体に害があるっていわれてるものを好むのもまた人間の謎だね。


「さっきのお前に連絡先聞くときのあの顔。どう見ても恋する乙女だってこと、お前ならわかるだろう？」

「そんなことよりコーヒーのおかわりちょうだい」

「俺は。もうしばらくタバコを吸っている。コーヒーが飲みたいならセルフでよろしく」

「はあ？」

「大丈夫かなー、青葉ちゃん。このあたり治安よくもないし。何度も来てヤバイのに顔覚えられてなきゃいいが」


チッと舌打ちすると、立ち上がる。


「ああもう。送ればいいんだろ？」

「おう。紳士だねえ」

「言っておくけど青葉が心配なんじゃなくて。ケムいのが嫌なんだ」

「上等だ」

「それに、青葉をこんなとこに誘ってるのはマスターだからね？　治安とか気にするなら呼ぶなよ」

「なに言ってる。あの子は俺に誘われるから来るわけでも。パフェやパンケーキのタダ食い目当てで来るわけでもない」

「その言い逃れキツイよ」

「言い逃れなもんか。あの子はお前に会いたいから来るんだ」