カタヲモイ、解消シマス。


マスター、僕知らなかったよ。


青葉のいない世界は

こんなにも退屈なんだね。


カラン、と店の扉が開く。


「すみません。もう今日の営業は――」

「わたしは大歓迎なんじゃないんですか?」


――青葉。


「ああ。そうですね、君は私の友人なので」


青葉が、やってきた。


だけどもう僕のことは覚えていない。


だからマスターの友人としてここに来る。


マスターみたいな男と君が仲良くなるのはオススメしないけどねえ。


今は君が子供だからなにもしなよ?

でも、そのうちペロリと食われちゃったりして。


青葉は、

カウンターに向かわずに


まっすぐ僕の前まで歩いてきた。


(……?)


「あの」

「なに」青葉の目を見ずに返事した。

「どこかでお会いしたこと、ありませんか」


青葉を見ると

まっすぐに、僕を見つめている。


ドクンと胸が鳴った。


最後に君を抱えたときの温もりを

君とキスしたときの唇の柔らかさを

君の甘い香りを、思い出す。


もう一度。

できるものなら――。


「さあ。ここで顔くらいは合わせているかもね」

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