彼・・・私の天使。


 何だか普段より疲れた。帰って食事もシャワーも済んでソファーでボーッとしてたら、着信音。
 天使から
「すみません。面接終わったら、すぐバイトの時間で連絡出来なくて」

「いいのよ。それよりどうだったの? 面接は」

「はい。結果は、まだですけど信頼出来る感じがして、僕は気に入ったんですけど、どうかな?」

「そう。どれくらいかかるの? 決まるまで」

「一週間以内に連絡があるそうです」

「一週間か、長いね。楽しみにしてるわね。合格したら、お祝いしてあげる」

「そんな、劇団に受かったくらいで大袈裟ですよ」

「でも、役者修行の再出発でしょう? やっぱり、お祝いよ」

「ありがとう。今までそんなこと言ってくれた人いなかったから。あなたに出会えて良かった。通知が来たら、すぐ連絡します。じゃ、おやすみなさい」

 名古屋のご家族は彼が役者になるのを反対してるのかしら? 
 和菓子屋さんは、お兄様が継いでいるんだし、彼には一番やりたい事をさせてあげればいいのに。ご両親は彼にも手伝って欲しかったのかな。

 そういえば名古屋では有名な和菓子屋さんって言ってたっけ。かなり大きな会社規模の和菓子屋さんなのかしら。
 名古屋に帰れば彼、本当に、お坊ちゃま? 
 お父様が社長、お母様が副社長、お兄様が専務だとしたら、彼は常務? 有り得る。

 私も、たった二店舗だけど兄弟が居たら、どんなに良いかと何度思った事か。



 二日後。そろそろ仕事の終わる時間に天使からの着信。
「僕です。合格通知が来ました」
 嬉しそうな天使の声。

「おめでとう。良かった。お祝いしなきゃね。いつがいいかな? 夜は塾のバイトよね?」

「はい。昼間なら空いてますけど」

「お昼? あっ、そうだ。じゃあ、あさってのお昼、都合はいい?」

「はい。大丈夫です」

「また連絡するから空けておいてね。じゃあ」

 あさって、お店は定休日。とっても良いこと思い付いた。帰り支度のスタッフ二人を呼び止めて

「お願い出来るかな?」

「喜んでやらせてもらいます。ありがとうございます」

 これで準備はOK!
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