彼・・・私の天使。


 会いたかった。唇に触れたかった。肩を抱きしめたかった。僕だけが知っている、あなたのすべてを感じたかった。僕の腕の中で、もっとキレイに変わっていくあなたを……。

「今までも思ってたけど、今、真剣に思ってる。ずっとこうしていたい。もう離れているのは嫌だ」

「…………」

「劇団の事務所に行った時に団長に聴いてみたんだ。前から付き合ってる人が居るんですけど、やっぱり隠さなければいけないんでしょうかって。そしたら、ここは人気アイドルを抱える芸能プロダクションじゃないからプライベートにまで口出しするつもりはないって言われた。それにもう二十八歳だし充分大人だから任せるよって」

「でも、今放送されてるドラマでデビューしたばかりなのに、出来る限り知られない方がいいと思うの」

「詩織さんが週刊誌に追いかけられるようなことはしないから。もしもそんなことになったら、お店にも迷惑かけるかもしれないし。きょうもマンションの駐車場に車を止めて歩いて来たから。ここすぐ近くだから僕がこの辺を歩いてても、おかしくないし。とにかく僕に任せて大丈夫だから」

「でも、あなたのファンになってくれた人たちを裏切るみたいで申し訳ないの」

「それは仕事で応えていけば良いことだから。プライベートは別だから詩織さんが気にすることじゃないよ。ファンでいてくれる皆の気持ちに個人的に応える訳にはいかないだろ?」

「でも……。中には応えたいって思うような可愛い子が居たりして?」

「もう、まだ分からないの? 僕がどれだけあなたを愛してるのか。二十四時間一緒に居たい。ずっと抱いていたい。他の事なんてどうでもいいくらい愛してるのに……。口で言っても分からない人には体で分からせる。いいの?」

「ダメ……。もうダメだから。分かったから」

「ダメって言われると止められなくなるの知ってる?」

「そんなの知らない……」

 僕は彼女の白い肌に唇を落とした。
< 79 / 108 >

この作品をシェア

pagetop