【超短編】壁
―01―
何気ない会話の中で、君が髪をかき上げる。


小学生の頃は、男の子っぽくて、髪も短かった君。


男女混合のサッカーチームで、レギュラーから外された時、




「なんで、女なんかに生まれたんだよ!」




と、陰でこっそりと泣いていた君。


それが高校生になってからは、化粧なんかして、肩までかかる髪を茶色く染めて、いつしか話の途中で髪を弄るのが癖になっているなんて、あのころからは想像できない。


むしろ、僕が気づくのが遅すぎたのだ。




君が女の子だって事を…。



幼稚園から一緒で、家も近くて、知らない事なんてないくらいの君なのに、君が女の子だってことだけは、どこかで封印していた僕がいたんだ。


今更気づいたって遅い。


だけど、やっぱり、君が髪の毛をいじる度、その指に光る指輪に胸がチクチクとしてしまう。


君は、そんな僕の気持ちなんて露知らず、今日も彼氏の愚痴を僕に報告してくれる。


何かアドバイスをくれないかと、僕に頼ってくる。

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