上司との同居は婚約破棄から

 不意に部屋のドアがノックされた。

「はい。」

「明日の晩は伊織のところへ行かないか。」

「え、えぇ。はい。」

 週末はどう過ごすのだろうとは思っていた。
 お互い干渉せずに過ごすのだろうという予想は脆くも崩れ去った。

「では、それまでにここへ住む色々の雑用を済ませてこい。」

 ドアは開けられることなく、ドアを一枚挟んだ会話。
 ただそれだけでどこかもどかしい。

「あ、あの。
 最小限にするので荷物はこの部屋に持ってきても……。」

「今さらだな。好きにしろ。」

 優しいのか優しくないのかよく分からない高宮課長との会話を終えて、ベッドへと頭をうずめた。

 菊池さんのところへ行くのは私への気遣いだと思う。

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