微笑みの下の隠しきれない想い~アナタは渡さない~
彼女は不器用で初々しい

気づいてないと思ってた?

コンコン 「失礼いたします。
シェリー様がいらっしゃいました。」


「通せ。」


ここはヴィルヘリム王国の中心にある城の一部屋


白で統一された職人の技が光る豪華な部屋で


ベッドに倒れ込んでいる王子がいた。


「失礼します。シェリーです」


慣れたような様子の彼女がこの話の主人公シェリー


赤が強い茶色のさらさらな髪を邪魔にならないよう


いつも一つにまとめて結び、


飾りには純白の真珠がついているだけの


地味、いや素朴な髪型の彼女はその血筋を示す


オリーブ色の瞳をしていた。


真っ白なコックコートを着た彼女は


小さな天使のようだと厨房では人気者だ。




「王子、起きていますか?


王子??


せっかく作ったのに、溶けてしまいそう。」


そうつぶやきながらシェリーの心は


そのままずっと見ていたい誰にも邪魔されずに


と願っていた


「キスの一つでもしてくれないか?」


ゆっくり眼を開けながら微笑む彼は


この国の王子ガヤック。


城下町に行けば白い王子様と黄色い声が止まない


彼はここ5日続いた経済会議で疲弊していた。


「からかわないでください!
いらないのでしたら持って帰ります。」


寝ていると思って油断していたのでびっくりして


照れることもできずに慌ててしまった


それに、ただのいたずらにしては心臓に悪い


「少し怒った顔もかわいいね。
もちろん食べるに決まっているだろう。
私が疲れていると君はいつも持ってきてくれるね」


もちろん、と言われドキンと音をたてる胸は


次になんと言われるのかドキドキしていた


「その話し方は今はなしにしてくれませんか??
とっても堅苦しいです。」


「会議は終わったっていうのに、
まだ気が抜けてなくてな。今回はてこずったぞ」
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