キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
そして今日が本当に一年最後の日。大晦日。
晴れたけど北風が強くて、朝から首を竦めちゃうような冬の洗礼を受けた。

お昼過ぎにミチルさんの車で郊外にある、大駐車場完備の大型スーパーに出かけた。
年越しが日本の伝統なんだってしみじみ思うのは、やっぱり大晦日かなぁ。
おせちとエビ天が並んだ特設売り場に、人だかりが出来てるのとか。どの人のカートをちょっと覗き見しても、普段より奮発した感が満載で。
新しい年を迎えるぞーっていう独特な気合が入ってて、お祭りの一種なのかも知れない。これも。

「りっちゃん、エビ天は何本にする?」

「うーん、一本でいいかなぁ」

「じゃあ、ちくわ天も買おうか。りっちゃん好きでしょ」

中高年の主婦に雑じって、美形のお兄さんがトング片手に、にっこり笑うもんだから周囲の視線が釘付けになってますよ、ミチルさん?

他にもお蕎麦やお餅、おせちは昆布巻きと黒豆、後はおつまみになるものをいつもより多めに買って、スーパーを後にした。
売り場を回ってる間中、ミチルさんが足を止めて商品の品定めを始めるたび、両隣りの奥様方が見とれてる。・・・をエンドレスに繰り返してた。
二人で出かけると毎回こんなカンジです、いつもどこでも。

途中、ドラッグストアでトイレットペーパーと洗濯洗剤も買い足して家路に着く。
車がどこかの中学校の脇を差し掛かり、誰の姿もない校庭が何とはなしに目に映った。ただ見送って視線をフロントガラスの向こうに戻すと、ややあってから。

「・・・そうだ、りっちゃん。隆弘(たかひろ)のお墓参り、いつにしようか」

ハンドルを握ったままでミチルさんが、いつもと同じにやんわりとあたし
に訊ねた。
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