キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
すると、「お疲れさまです」っていう声と共に、当番社員の緒方さんが少し強張った表情でUターンして来たかと思いきや、店長に小声で言った。

「・・・社長です」

一瞬、言葉もなく『?!』って顔になった店長が、ずい分と俊敏な動作でイスから立ち上がり、大股で吉井さんの後ろを通ってフロアに出て行った。
『明けましておめでとうございます』の挨拶も、朝とは違う気合いが入って聴こえる。分かりやすい人だなぁ、この人も。内心で苦笑い。
やがて店長が社長と連れ立って、裏のオフィススペースに二人で姿を見せた。
全員が立ち上がり、一礼して挨拶をする。すでに立ってたあたしも倣って頭を下げた。

実のところ、会うのは初めてだった。面接は店長だけで、社長はたまにしか来ないって聴いてた。他にも会社を持っていて、おおよその決定権は店長に一任されてるとかナンとか。
ホームページで確認した名前は、確か千倉(ちくら)社長。何歳くらいだろう。顔を上げると。・・・・・・向かいの吉井さんを挟んで、その人と目が合った。

「・・・・・・あ」

思い切り、ココロの声がダダ洩れる。
はっとして口許を抑えたけど、店長以下みなさんの訝しげな視線がイタイ。

「す、すみません、何でもありません・・・!」

縮こまって平謝りする、あたし。

店長のデスクの脇に立ち、全員を見回した三つ揃い姿の、グランドエステートの社長が。
・・・・・・まさかの淳人さん。だったなんて。

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