キミに降る雪を、僕はすべて溶かす
「実は今夜は、二人で女子会を楽しみたいと思っているんです。利律子ちゃんを一晩、お預かりしても構わないでしょうか」

突然、彼女が言い出して目を丸くする。
え? 一晩・・・?!
いつの間にそんな話になったのかと、瞬きしながら唖然とするあたし。

「・・・えぇ、はい、お気遣いなく。妹みたいな感じですし、明日は主人に送らせますから、・・・はい、えぇ、利律子ちゃんは責任持ってお預かりさせていただきます」

園児を預かった幼稚園の先生?って受け答えをしてた睦月さんが、話が終わったらしく、まだ繋がったままのそれを無言の笑みで返してくれる。

取りあえずは話を合わせた方がいいのかと、ちょっと動揺しながら耳にスマホを当てた。

「あの、ミチルさん・・・?」

『・・・たまには、女の子同士も楽しそうだね。夜更かしし過ぎないように気を付けるんだよ?』

「うん。・・・そうする」

『りっちゃんが傍にいないと、寂しくて眠れそうにないかな僕は』

向こう側から、切なげに笑む声が聴こえて。
胸がぎゅっと締め付けられた。

「ごめんね、ミチルさん」

『その分はちゃんと埋め合わせしてもらうよ』

最後は悪戯気味に返ってきたから、少しほっとした。怒ってはないみたい。

通話を切り、思わず深く息を吐くあたし。
清楚な顔立ちに綺麗な微笑みを浮かべた睦月さんは、「お泊り会なんて学生以来よ」って。
無邪気なのか、強引なのか。捉えどころがなくてちょっと困った。



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