ビロードの背中
私は飲み終わったコーヒーカップを洗い、かばんを手に持った。

彼に笑顔を向ける。


「ありがとう、ヒーロー。

・・・解決してくれて。」


「『ありがとう』って、言わないでよ。」


静かに答える。



私は靴を履き、玄関を開けた。


「今日、いい天気になりそうね。」


「ほんとだ。

・・・姉さん、また・・・。

・・・またね。」



彼は何か言おうとして、やめたようだった。


彼の部屋を後にして、もう一度空を見上げた。

今日は晴れる――。





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