ビロードの背中
店に入ると金曜日のせいかサラリーマンで賑やかだったが、

薄暗く、少し怖いと感じる店内だった。



カウンターに座ると注文していないのに彼の前に黒ビールが置かれた。

バーテンダーが私を見る。


「オレンジジュース。」


バーテンダーが私に聞こえるように、彼の耳元で話す。


「相手がジュースじゃ、テイクアウトは無理だな。」


彼が笑いながらタバコに火をつけた。



「―― アイツ、友達なんだ。」


オレンジジュースが前に置かれた。




乾杯とかお疲れ様とかの空気ではない。

何も言わずに口をつけた・・。



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