胸騒ぎの恋人
隆さんはホテルのブライダルサロンの入り口で
 待っていた。


「ごめんなさい。待たれましたか?」


 建前上、そう言った。
 
 
「いいえ、俺もつい今しがた着いたとこ」


 彼は笑いながら私を見たけど、
 何か……いつもと感じが違う?

 雰囲気が違うのか? 何かが変わった。


 疑問を持ったままサロンの中に入り、
 担当者が来る前に新婚旅行について話し始めた。
 
 
「私、ヴェネツィアに行ってみたいな」


 彼は余程の事がない限り私の意見に反対はしないし、
 反論もしない。
 
 
「ヴェネツィアか……ロマンチックでいいかも。
 ホテルは友人に手配を頼むよ、それで良い?」

「えぇ」

「良かっ……っはあっくしょん!」


 彼がひとつくしゃみをした。
 
 そのあまりの大きさに私は驚いて
 ティッシュを手渡した。
 
 
「だいじょうぶ?」
 
「あぁ ―― ちょっと風邪を引いたみたいだ」


 話していると担当者が来て、
 新婚旅行の事を話し航空券の手配を頼んだ。

 招待客のリストや食事の事を話し合い、
 1時間程でサロンを出た。


「これから食事にと言いたいんだけど、
 キミにまで風邪、移しちゃうとマズいから」
 
 
 申し訳なく行った彼に私は微笑んだ。
 
 
「大丈夫。私はタクシー拾って帰るから」

「じゃ、玄関まで送るよ」


 2人でエレベーターに乗り、玄関まで出て。

 先に進んだ隆さんがタクシーの空車を止めてくれ、
 後部席へ乗り込もうとして、ふと目に飛び込んできた
 向かい側の歩道に立っている手嶌さんの姿に、
 また心臓の鼓動がドクン! と、跳ねた。
 
 
「……」


 やだ、私 ―― どうしたんやろ……
 
 隆さんも心配そうに訊ねてきた。
 
 
「どうしたの? 実桜さん」

「あ、ううん ―― 何でもない。
 じゃ、お休みなさい」  


 気を撮り直し座席に乗り込む。
 
 タクシーがゆっくり走り出して、
 車群の中へ入りながら少しずつ速度を上げていく。
 
 私はフロントミラー越しの光景で、
 手嶌さんが同世代位の凄く綺麗な女性と仲睦まじ気に
 歩き出したのを見て。
 
 ちょっとした軽い衝撃を覚え、慌てて視線を逸し、
 俯いた。
 
 ……バカみたい。
 なんで私がショック受ける事あるの?
 
 あれだけのイケメンで仕事もデキる男の人なら
 並みの女は放っておくハズないのに。
 
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