12月の春、白い桜が降る。
クラスメイトで、顔を覚えている人が、楓以外、一人もいなかった。

怖いくらいに、私の記憶から消え失せていた。

もちろん名前も、そして、今私たちに英語授業を教えている、あの男の先生のことも。

一日でこんなに忘れるだなんてやはりおかしい、普通じゃない。

自分で自分が怖くなり、家に帰ってから母親に相談をした。

母親もすぐに顔色が変わり、私を急いで行きつけの病院へ連れていった。

怖くてたまらなかった。

もしこの症状が今私の患っている病気の症状の一種だとして、既にまずい段階なんだとしたら…。

もうわずかしか生きられないと言われたら…。

そんな不安と恐怖が、ずっと頭の中で渦を描いていた。

ひんやりとした空気の中、
『結川ひなたさん、二番にお入りください』という病院内アナウンスが、

ますます私を恐怖へと導いた。
< 123 / 210 >

この作品をシェア

pagetop