12月の春、白い桜が降る。
そして高校一年、付き合って七ヶ月ほどたった秋の夕方、

僕はなんとなくひなたの高校へと向かい、
ひなたの友達からまだ教室にいるよ、と聞き教室まで迎えに行った。

ドアを開けようとした時、中から泣き声が聞こえた。

僕が聞き間違えるわけもない、紛れもなくひなたの泣き声だった。

どうして、どうしてよ、と何度も何度も声を出しては泣き喚いている。

腕に力が入らず、結局ドアを開けることは出来なかった。

その時の僕は、なんでひなたがあんなに泣いていたのかもわからず、声もかけずに、
一人で帰ってしまった。

どうして僕は、本当にこうなんだろう。

今なら…、今の僕なら、彼女を強く強く抱きしめて、安心させてあげられるように、優しい言葉をかけたはずなのに。

どうしようも出来ない過去を、どうしようも変えられない過去が、
憎くて憎くて、たまらない。
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