12月の春、白い桜が降る。
｢私が死ぬって知ったら楓(かえで)、絶対泣いちゃうんだろうなぁ｣


三人が去ってから、ひなたがぽつんと呟いたのがやけに頭の奥の方まで響いて聞こえた。

何も言えなかった。

僕は、ひなたが死ぬのなんてやっぱり想像出来なくて、号泣するのか、
それとも実感が湧かずに涙さえ流すことが出来ないのか。

今の僕には見当もつかない。

ただ、どうしても彼女には死んで欲しくない。

これからもずっと僕の隣で笑っていてくれたらいいのに。

｢ねぇ、喉渇かない？ラムネでも飲もう｣
｢いいね、飲もう｣

僕らはすぐ近くにあったラムネの屋台で、青く透き通った、ビー玉の入っている瓶を二つ受け取る。

｢わっ！！｣
玉押しで瓶の蓋を開けると、途端に冷たい泡が吹き出した。

僕の手も顔も炭酸だらけだったが、ひなたは隣でお腹を抱えながら大笑いしてる。

それを見て内心ほっとしながら、｢笑いすぎ｣と僕も笑った。

｢だって、よう開けるの下手くそなんだもん｣

そういってひなたも瓶口に玉押しを思いっきり押し込んだ。

ひなたの瓶からも泡が吹き出し、二人でまた大笑いした。
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