やさしくしないで ~なぜか、私。有能な上司に狙われてます~

課長、年齢も上だ。
本当にいろんなこと知ってるし。
仕事で困ったことがあったら、すぐに助けてくれて、頼りになる。
私なんかより、はるかに頭がよくて何枚も上手だ。
憎らしいことに、大人の男性という雰囲気がただよってて半端なく格好いい。
恋人として、あの人の横に立つには勇気がいる。
努力しても。元が地味だから。どうがんばっても、私は課長と釣り合いがとれるような女性には、なれない。

ちょっと待って。私、もしかして、課長に興味があるの?
課長と付き合いたいけど、彼の横に立つのは自信がないから無理だと思ってる?
すらっとした長身に、整った顔、おまけに有能で文句のつけようがない。
だれだって、そんな人が恋人だったらいいなと思う。

その通りだ。
よかった。私、自分の置かれた状況がわかってるじゃん。
私は、課長に恋してるわけじゃない。彼のことが好きなわけじゃない。
まあ、親密にはなったけど。やっぱり私には、過ぎた人だ。
まあ彼に、勝てるのは若さぐらいだけど。
う~ん。
問題は、断ると聞いて納得してくれるのかな。

課長が相手だと知られたら、とっても面倒なことになりそうだ。
だいたい、会社の女性社員に、課長と付き合うなんて知られたら……
私より上にいる、お局様たちに絶大な人気がある。その人たち全員敵に回すことになるかもしれない。そうなったら、会社で生きていけない。

巻き込まれないように、何かしないと、まずいのではないか?
このままでいくと……
課長の言いなりになって……
いつの間にか彼の言う通りになって。

彼の嫁に?なに、それ。
毎日朝食でもダメ出しされそう。
目玉焼きの焼き方が、不正確だ。
火の温度は確認したか?
笑いがこみ上げてくる。
全然、想像つかないけどなあ。

課長のために毎日食事を作って、彼の帰りを待つだなんて。
何か、別次元の話みたいで、他人事でしかない。

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