私達の初恋には秘密がある
転校生
朝は苦手。
朝日が眩しいから。
手で避けても避けきれない、手からはみ出してくる光が私は鬱陶しくて嫌いだった。

今日はりょうちゃんが転校してくる。
どこの組になるんだろう、なんて気が気じゃない。
ずっと不安がって負のループだ。
そんなことを考えるのも嫌になって、私は、もう考えるのはよそうと自転車のペダルを蹴った。

重苦しい階段を上がって、教室のドア開く。
すると、今まで聞こえなかった雑音が一斉に溢れ出した。
鬱陶しいな。静かにしろよ。
口が悪くなったのはいつからだろう。心の中で会話するのが多くなった。

ドカっと自分の席に荷物を置いて席に着いた。
その後イヤホンジャックを耳にぶち込む。

鼓膜に触れるのはいつもの変わり映えしない音楽。

そのまま、窓外をぼーっと眺めてた。

りょうちゃん、ちゃんと来れたかな。

ホームルームは結構直ぐに始まった。
いつものプレイリストが終わる前に始まったから分かる。
いつもと同じ速度の自転車、起きる時間、曲の長さ。毎日が平凡で代わり映えなどしない。

「今日は皆さんに紹介しないといけない人がいます」

在り来りの言葉に始まった、急展開。
不意にその言葉だけがハッキリと私の耳に届いた。

なんて、言った?

雑音が大きくなる。

「入ってきてください」

ガラガラとドアを開ける音が確かに聞こえる。

嘘でしょ?······

ねぇ、神様。
私をどれだけ苦しめれば気が済むの。
せめて、せめて、違うクラスであって欲しいという願いすらも叶わないのでしょうか...。

そこには昨晩見た、すらりと爽やかな好青年が少し緊張しがちで立っていた。
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