旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「だ、大丈夫です!私これからお弁当作るんで!津ヶ谷さんは時間までゆっくりしててください!」
そしてそう言って、逃げるように洗面所を飛び出した。
あぁもう、あんな風に簡単に触れてみせるからドキドキが止まらなくなる。
こんな感じでこれからの生活大丈夫なんだろうか……。
あれ、でもちょっと待って。
好きだと自覚したはいいけれど、私はこれからどうすればいいんだろう。
告白して、もし津ヶ谷さんが頷いてくれたら本物の夫婦になれる。
だけど、もしダメだったら。
本物の夫婦になるつもりなどないとしたら。
津ヶ谷さんはきっと、相手の気持ちに応えられないのに縛り付けておくようなひどい人じゃない。
優しい人だから、恐らくこの偽装夫婦という形を解消するだろう。
そしたらもう私たちは、夫婦ではなくなる。
本当の私と本当の彼をつなぐものが、なくなってしまう。
……そんなの、やだ。
先ほどまで浮かれていた胸に、途端に不安がこみ上げた。
そんな不安で胸の中は曇り、津ヶ谷さんと肩を並べて家を出る気にはなれず、私は彼から少し遅れて家を出た。
ますます津ヶ谷さんの前でどんな顔をしたらいいかがわからない……。
ぐるぐると頭をめぐらせながら出社をすると、オフィスはなにやらざわついていた。
ん?どうかしたのかな。
不思議には思うけれど同僚たちに『なになに?』とたずねるのは、自分のイメージを守るためにできなくて、デスクにつき始業の準備をしながら周囲の声に聞き耳をたてた。